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不動産投資の秘密を探して

「T様…」彼女が顔を上げる。

「私は、I・T子と申します」「はい…」私は領いた。 聞いたことのない名前である。
「え?」しかし、思い当たった。 「Iさん、というと、あの、もしかして?」「父がお世話になっております」「ああ…、そうですか」私は膝の力が抜けそうだった。
「あ、あの、それは、また、えっと…、どう、あの、どうして、というか、えっと、まあ、とにかく、そこにお掛けになって下さい」「素晴らしいお部屋なので、見せてもらうようにと」「ああ…、そういう意味ですか」そうは言うものの、意味はわからない。 「T様も素晴らしいお方なので、よく見ておくようにと言われております」「は?」「はい」彼女は領き、カウンターの椅子に座った。
しばらく沈黙。 彼女は私を見た。
私も彼女の顔を見た。 まず思ったのは、Iさんに全然似ていない、ということである。

もしかして血のつながりはないのかもしれない、と疑うほどだ。 日本人離れしたくっきりとした顔つきだ。
髪型はおかっぱというのか、肩に軽くかかる程度。 ベージュのコートを着ていた。
「あの、もしかして、お部屋をお探しでしょうか?」私は尋ねた。 なんというのか、それが尋ねたかったわけではなく、その台詞しかレパートリーになかったのだ。
「はい」彼女は領いた。 「T様のお部屋に行けと父に言われております。
でも、どちらなのかわかりません。 それで、ここへ…」自分の席へ行き、パソコンのマウスに触れる。
作成書類を画面に呼び出した。 社長が言った私の血液は温度が上昇していたにちがいない。
これは、困ったぞ、と思った。 それが第一の感情である。
しかし、冷静にならなければならない。 これくらいの試練は仕事上覚悟しなければならない範囲だろう。

否、そうかな、仕事とは関係がないのではないか。 でも、原因といえば、まちがいなくIさんなのだから、やっぱり仕事のうちだ。
そう解釈しよう。 これはプライベートではない。
「あの、私は今から、明日のために書類を作らないといけなくて、その、残業なのです。 また、あのご連絡をいたしますので、その、申し訳ありませんが、後日また、というわけには…」「はい、大丈夫です」彼女は領いた。
「ここで、お待ちしております。 あの、お邪魔にならなければ、ですが」「いえ、その、邪魔にはなりませんけれど……」駄目だ、つい言ってしまった。

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